「うる星やつら」の博物誌


映画2 ビューティフル・ドリーマー 1984年

監督:脚本 押井守




この映画は、大変人気があり、熱狂的に支持されているようです。

しかし、この映画については、「今まで見たことのないような斬新な作品」と評される一方で、

「よくある陳腐な話」と評されることもあります。

なぜ、このように相反する評価がなされるのか? というと、それは、SFファンかどうか? によるのではないかと思います。

フレデリック・ブラウンや、フィリップ・K・ディック 筒井康隆 のファンならば、

「町から脱け出せない」「時間の混乱」「日常の崩壊」「夢の中の夢」などのモチーフが出てくるたびに、にんまりするはずです。

以前、小学生の甥に、この映画を見せて感想を聞いたことがあります。するとこんな答えが返ってきました。

「ああ、分かるよ、マトリックスと同じだよね。マトリックスは、コンピュータの中の話で、ビューティフル・ドリーマーは、ラムの夢の中の話だよね」

正にその通りなのですが・・・・このフォーマットの話は、単純なので、類型を一度見てしまうと陳腐化してしまうのかもしれません。

また、人は、最初に感動したものを絶対視する傾向がありますので、似たような話を見ると、「なーんだ、パクリじゃないか!」となってしまうのかもしれませ ん。

僕は、フレデリック・ブラウンの「発狂した宇宙」を読んで、世界観が変わってしまうような衝撃を受けたことを今でも覚えているのですが・・・・

もし最初に、「ビューティフル・ドリーマー」を見ていたら? その感動がどれほどのものだったかと・・・・ちょっと羨ましくなりました。


友引高校は何階建てか?



まず最初に温泉マークが、戦車の砲身にぶら下がっているシーン。
このシーンでは、あたるのクラスは、三階にあるようです。

ところで、あたるのクラスは、校長室の真上ということですが、
校長室が二階のこの位置にあるというはちょっと不自然です。




さくら先生と温泉が、喫茶店を出て、学校に戻ってきたところです。
このシーンでは校舎は二階建になっています。



お好み焼き屋から、みなで、学校へやって来たところです。
このシーンでも校舎は二階建てになっています。



みなが校舎を調べていると、校舎は四階建になります。
そしてこの時、さくら先生はこう言います。
「築60年木造モルタル三階建の時計塔校舎、いつから四階建になったのかの?」

でも、ちょっと待って下さい。この際、階数のことは置いておきますが、しかし、この校舎は木造モルタルではなく、どう見ても、単なる木 造校舎です。

(木造モルタルというのは、木造の外側をセメントなどで固めたりする工法です。)

もしかすると、さくら先生に見えていたのは、この木造校舎とは違う・・・・別な何かだったのかも知れません?



これは、ラスト間近で、ラムがあたるに電撃を食らわせたシーンです。

この赤い帽子をかぶっている人は、二階のバルコニーで作業をしていますから、校舎は三階建のようです。

そして電撃が出ているのは、校舎の二階からです。




エンディングです。校舎は二階になっており、ラムが電撃で壊した窓も二階になっています。

三階部分は消えてしまったようです。


以上が、映画の中での校舎の変遷です。では本当の校舎は何階建なのでしょうか? 

答えは、2階建だと思います。それは、TVアニメの校舎が、2階建になっているからです。


TVアニメ 第2話 「町に石油の雨がふる」より

しかし、このTVアニメの校舎も、影でしかありません。なぜならば、友引高校を作ったのは、TV製作者ではなく、原作漫画家の高橋留美子だからです。


原作02.01「思い過ごしも恋のうち」 より

原作漫画では、友引高校は、鉄筋コンクリート4階建になっています。更に、友引高校が鉄筋コンクリートになる前は、木造三階建でした。


原作02.22「怪人赤マンと」より

また、原作漫画「ラムちゃん、ウシになる」では、あたるのクラスは、鉄筋コンクリート四階建の校舎の三階にあることが分かります。そして、TVアニメの方 では、あたるのクラスは、木造二階建の校舎の二階であることが分かります。



嘘を言うな! 二階から落ちたなどとたわごとを・・・
原作漫画10.06
「ラムちゃん、ウシになる」
TVアニメ140話
「ラムちゃん牛になる!?」

こうして見てみると、「うる星やつら」には、実際にパラレルワールドが存在しています。

原作漫画の中のうる星やつらの世界。そしてその世界とは微妙にずれた、TVアニメの中のうる星やつらの世界。

・・・・そしてそのまた影として、映画ビューティフル・ドリーマーの中のうる星やつらの世界が存在します。

しかもその映画の中の世界は、ラムの夢の中の世界であり・・・・皆は元の現実の世界に戻ろうとしているわけですが・・・・・

さて、その現実とは、どの現実なのか?

鉄筋コンクリート四階建の友引高校の世界か? 木造二階建の友引高校の世界か? それとも、木造モルタル三階建の 友引高校の世界なのか?・・・・

この意識のズレが、映画ビューティフル・ドリーマーの友引高校の階数のズレとして顕れた。と見ることができます。

そして、これが一番重要なのですが・・・・友引高校は、我々の現実の世界には存在しないのです。

幾重にも折り重なった虚像を潜り抜け・・・・彼らが手に入れた実像とは?・・・・・

(でも、実際は、映画を作っているうちに、たまたまそうなっただけでしょうけどね。)


この他については、またの機会に。


2005/04/03

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