「うる星やつら」の博物 誌

原作 コミックス 02.02 ワ イド版 01.12 性(さが)
テレビアニメ 第164話 魔境転生!ダーリンはなにを考えてるっちゃ!?

おもな登場人物

・諸星あたる
・メガネ
・富士山麓のコロボックル
・女の英語の先生
・三宅しのぶ
・ラム

卵から生まれたもの
・岩の女
・脳天鬼
・ロクデナシ
・ムセッ草
・ウツリ木
・ヤジ馬
・極楽トンボ
・ソノヒグラシ
・色気ヅキ夜
・ワル海苔
・ピンクの月


今回は、テレビアニメを主にして話を進めて行きたいと思います。

まず、テレビアニメの出だしは、インディージョーンズの「魔宮の伝説」のパロディーであることは、「うる星やつら」のモチーフ 魔宮の伝説 で既に 述べましたが、この他にも色々とパロディーがあるようです。



あたるが、面堂のB29爆撃機 について評する大げさな物言いは、漫画、「美味しんぼう」のパロディーでしょうか。
B29
あたる
B29、なんて、なんて素晴らしいんだ。この虚飾を廃した機能主義の美しさときたらどうだ!! 

無骨な壁の肌触りを通して、勇ましかった空の男たちの息遣 いさえ聞こえてくるような気がするじゃないか。



この回は、長台詞が多く、その台詞回しも独特なものが多かったと思いますが、

それはそれらが、坂 口安吾の「ラムネ氏のこと」のパロディーになっているからだと思います。

ラムネ氏

面堂
「なぜだ。なぜこんな思いまでしてキノコを食わねばならんのだ」

長老
「旅の人、文化を築くとは並々ならぬ努力と忍耐が必要なのじゃ。このおぞましい世界もそのための布石なのじゃ」

面堂
「文化文化ってキノコが一本食えるようになるだけじゃないですか」

長老
「それが文化というものじゃ」
・・・・・・・
長老
「毒を食らった苦しみの中で親は子に言う、『よいか、この赤いキノコのヘタの斑点は食ってはならぬ。しかし味だけは忘れてはならぬ』そしてその子へそして またその子孫へ限りなく続くさだめなのじゃ」

坂口安吾 ラムネ氏のこと

(フグが食されるようになるまでの推測)

 とにかく、この怪物を食べてくれようと心をかため、たちまち十字架にかけられて天国へ急いだ人があるはずだが、そのとき、子孫を枕頭(ちんとう)に集め て、爾来(じらい)この怪物を食ってはならぬと遺言した太郎兵衛もあるかも知れぬが、おい、俺は今ここにこうして死ぬけれども、この肉の甘味だけは子々孫 々忘れてはなならぬ。俺は不幸にして血をしぼるのを忘れたようだが、お前達は忘れず血をしぼって食うがいい。夢々勇気をくじいてはならぬ。こう遺言して往 生を遂げた頓兵衛がいたに相違ない・・・・・・

この次には、信州の奈良原という山奥での、キノコにまつわる話が出てくる。

ハイとバム

あんずの死
あんずが毒キノコを食べて死ぬ。

知覚の扉
死んだ後、光り輝き、想念が実体化する。


一体この、「毒を食べた者は死に、その想念が実体化する。」とはどういうことなのでしょうか。

これは、幻覚共同体の隠喩的な表現のようです。次の本にそのヒントのようなものがあります。

幻覚の共和国 金坂健二 晶文社

 つまり、LSDトリップの核心は、いっぺん死ぬ、ということなのである。もちろん肉体は生き たままで、い ままでの自分の一生によって形成されてきた <自己>がことごとく粉砕するのだ。

だからともかくHIGHにたっした人間は、変わってしまう。それ以前の彼ではなくなる。「チベットの死者の書」がHEADたちの聖書となったのは、それが ラマ教のシャーマンたちが死者に大往生の仕方を教える、"死に方の教科書" だったからだ。

そして自我形成があまりに硬く、いわばすなおに死ねない人にとって、LSD体験は永遠の地獄となるし、稀に狂気に導きかねない。

<自己>の最後の一片が遠ざかる灯のようにして消えて行く。その最後の瞬間まで、幻覚にいる自分を、そのかつての自分が見ている。だから厳密 にはHIGH であるとはいえない。灯がまたたき、またたきしながら、ついに消えて行くまでの時間は、いや幻覚のどの一瞬もそうだが、永遠なのだ。それが 消えてからは、もはや自分という個体は存在せず、全宇宙がその部屋であり自分であり、その逆も真なのだ。

もちろんこんなシナリオに従うようにして幻覚の時間があるわけではないが、ともかくハックスレイのいう"知覚の扉" を白い太陽が開くのは、その後のこと だ。

知覚の扉を白い太陽が開き、現れたの が、あんずの場 合、"悪い旅"(バム・トリップ)
悪い旅

あたるの場合は、"良い旅"(グッド・トリップ)となり、HIGHとなったのであろう。
良い旅



ちなみに、サイケデリック的な表現方法は、他のアニメにも取り入れられています。

例えば、文部省推薦の、「11ぴきのねこ」 という映画で、猫たちが旅の途中に、「マタタビの実?」に夢中になる。というシーンがあるのですが、ここで も、サイケデリックな、表現が用いられています。


原作漫画については、次の機会に少しだけ追加したいと思います。


2004/09/17
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