らんま1/2 

「鵺」の尻尾と「牛鶴鰻毛人」の尻尾


2007年08月11日

らんま1/2 18.02 悪魔の正体 高橋留美子 小学館
らんま1/2 18.02 悪魔の正体 高橋留美子 小学館
牛鶴鰻毛人(ニウホーマンマオレン) の尻尾は、ウナギになっているのですが、その尾の先に、ウナギの頭がついています。これは伝統的な、鵺 (ぬえ) の絵図を踏襲したものだと思います。

鵺 (ぬえ)
今昔図続百鬼  鳥山石燕 (とりやませきえん) 1712-1788

画図百鬼夜行全集 鳥山石燕 鵺 ぬえ

石燕の鵺の絵図も、尾の先にヘビの頭がついています。

最初にこのような、尾先がヘビの頭となっている絵図を描いたのは、海北忠左衛門(かいほうちゅうざえもん)、画名:海北友雪 であるようです。寛永十二年 (1635) 「源頼政鵺退治図絵馬」(清水寺)

しかし、この尾先をヘビの頭として描くというのは、かなり奇抜な発想であると思います。

たとえ、「頭は猿、体は狸、尾は蛇、手足は虎。」というような怪物であっても、尻尾が "尻尾" になっていれば、もしかするとこの世に存在するかもしれない? と思うことができますが、尻尾に蛇の頭がついていたのでは、これは、生物学上の一線を越え てしまっています。こんなものは、この世に存在するはずがないのです。

逆にこのように描いたということは、作者は、鵺を空想上の怪物として描いたと言えるのかもしれません。これでは、ギリシア神話の、ペガサスに乗ったベレロ ポンに退治されたキマイラのようです。

Bellerophon tötet die Chimäre, Berlin Neues Museum, Nordkuppelsaal
Bellerophon tötet die Chimäre, Berlin Neues Museum, Nordkuppelsaal

平家物語は神話ではないので、このような描写が非難されたこともあったようです。

本朝水滸伝豪傑八百人之一個
(ほんちょうすいこでんがうけつはつぴやくにんのひとり)
猪早太広直(いのはやたひろなを)
一勇斎 国芳画 (歌川国芳 1797〜1861)

歌川国芳 本朝水滸伝豪傑八百人之一個 猪早太広直 鵺退治

遠江(とをとをみ)の住人、大田伊豆八郎入道広政が嫡子なり。
頼政の良等(らうどう) にして 仁平四年五月頼政勅命に依って怪鳥(くわいてう) を射るその時早太、日華(ぢつくわ)門の下にて骨合(ほねあい)といふ名刀にて鵺を三刀(みかたな)さし勇名を万天(ばんてん)にのこす。

註:「骨合」 は、「骨食 (ほねくい)」の誤り。(源平盛衰記)

この絵図では、鵺の尻尾は、ヘビの頭の方ではなくちゃんと尻尾が描かれています。そして、イヌの父とウナギの母とから生まれた、ウナギイヌの尻尾もちゃん と、尻尾になっています。

天才バカボン うなぎいぬ 赤塚不二夫 
天才バカボン うなぎいぬ 赤塚不二夫

リンク
らんま/考 鵺と牛鶴鰻毛人

HOME    FRAME

inserted by FC2 system